なんとも、突然やって来た事態であった。
日曜日の朝、いつもより遅くまで寝ていた菜々さんを、朝ごはんを与えるために強制起床させたのが、午前8時頃だった。
六実は、一足お先の午前6時頃に朝ごはんを平らげ、ぷあくんと朝の散歩も済ませていた。
ゴンチが、いつものように介助しつつ、菜々に朝ご飯をあげた後、数種類の薬を飲ませた直後のことだった。
菜々が、突然ケイレンを起こして硬直したのである!
ゴンチは、何か喉に詰まらせたのかと、慌てて口の中に指を突っ込み吐き出させようとするも、まったく収まらないようだった。
別室で二度寝をむさぼっていたぷあくんは、ただ事ではないゴンチの悲鳴に、驚いて駆け寄ると、ゴンチがケイレンを起こした菜々を抱き抱え、必死に口の中に指を突っ込んで、吐き出させようとしているところだった。
二人で菜々の全身をさするなど、介抱の真似事のような対処をし続けると、とりあえずケイレンは収まり、呼吸も正常になってきたので、なんとか異常事態は脱したようだった。
本当に、焦った…
幸い、最悪の事態は免れたようだが、力を使い果たしたのか、菜々はグッタリとして、身動きもままらない。
ケイレンが収まった直後の菜々…
しばらくは、力尽きて横たわったままであった…
言うまでもなく、速攻で掛かり付けの動物病院に駆け込み、診察を受けて注射も打ってもらった。
原因はよくわからないが、犬は16歳ともなれば何があってもおかしくないということを淡々と説明され、再びケイレンが起きたときのための座薬をもらって病院を後にしたのだった。
帰りの車の中で、一緒に連れてきた六実の背中にカラダを預けて横になる菜々の姿に、なんとも言えぬ愛おしさを感じたものだった…
異父異母の妹でも、そばにいると落ち着くのだろうか…
まもなく帰宅すると、菜々さんはまるで泥のように眠り続けたのであった。
無事で、よかった。
本当に、よかった。
しかし、これからもまた、いつなんどき緊急事態が発生するかわからない。
心配でたまらんが、犬と共に暮らすとは、そういうものなのだろう。
でも、菜々さん…これからも出来る限り健康長寿で頼むぞ…