平成30年8月9日
園田競馬場において「クーパー君18歳誕生日記念」が開催され、大成功のうちに幕を下ろした。
そして…時は流れた。
クーパー君は、記念レースと同じ年の冬に…旅立った。
18歳を超えて…自分ひとりでは身動きも出来なくなって、目も耳も弱くなっても、ひたすら家族の愛情に応えて…生きることを諦めないクーパー君は、立派だった。
もう、流動食しか口に出来ずとも…
がんばる
こんなに小さくなって…てるてる坊主みたい…
最期は…ニャンコス家全員の愛情に包まれて、静かに息を引き取ったそうだ。
葬儀にはぷあ家4人も参列して、クーパー君を見送った。
「ニャンコス父」は、「クーパー君18歳誕生日記念」で的中させた馬券を払い戻しせずに残していて、静かに眠るクーパー君の手元に、そっと添えた。
三途の川の渡し賃は、六文銭という。
馬券の購入金額は安かったが、その配当金はクーパー君だけでなく、仲間パグの渡し賃を賄うにも十分だった。
神戸・宝塚の美しい夜空に、クーパー君はゆっくりと昇っていった...
そして、更に時は流れ…
菜々も…クーパー君の後を追うように、旅立った。
ふたりは、終生仲良しだった
ゴンチの元を後にした菜々は、ひとり…濃い霧の立ち込める三途の川を前にして、困ってキョロキョロしていただろう。
そこに、どこからともなくクーパー君が駆けつけて、手にした六文銭を見せびらかせて、さぞ得意気なカオをしただろう。
「ゴン兄も、向こうで待ってるよ」と、クーパー君が話しかけると、それまで不安と緊張で固かった菜々の頬が、一気に緩む。
間もなく...渡し舟がやってきて、二人はちょこんと乗り込む。
ギィ…ギギギィ…
船頭が、櫓を漕ぎはじめる。
二人を乗せた舟は、うっすらと明るい川面を滑るように進み…ゆっくり岸から離れる。
黒いパグと白いパグの背中は、仲良く並んで…霧に溶け込むように消えてゆく…
愛する人間たちとの思い出を、胸に...
-おしまい-