ぷあくんの日々

人と犬が幸せに暮らすために役立つ情報を発信します。

いつもの犬がいなくなった風景

この街に住み始めて10年になる。
その頃から、近所の交通量の比較的多い通りに面した小売店舗の店先に、いつも寝そべっている犬がいた。
恐らくは日本犬をベースとした雑種で、白地に茶柄のブチが特徴的な細身の犬であった。

年齢はわからなかったが、人が前を通り過ぎても床にベタリとつけた下顎を上げることもなく、小さな眼だけをチラリとこちらに向けるおとなしい犬だった。

休日、コンビニへ朝食を買いに行くことがあって、その途中にブチ犬の前を通るのだが、日当たりの良い土間で悠然と寝ている姿を横目で眺めたものだった。

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そして、10年が過ぎた。
昨年の初夏、ブチ犬が飼い主に寄り添われてヨロヨロ歩いているのを遠目に見つけた。
その飼い主も、ブチ犬に劣らぬほど高齢の女性で、ふたりで力を合わせて歩いているように見えた。
ブチ犬のカラダが少し傾くと、そっと飼い主に支えられ、それでも自分の足で歩いていた。

富士山は爽やかな夏山の姿で、それを見守っていた。

秋口に入ると、もう歩けなくなったのか、飼い主に抱えられながら散歩をする姿があった。
たとえ動けなくなっても、外に出たい欲求なのだろうか、飼い主はそれに応えるべく精一杯介護して狭い路地を歩いていた。

冬の冷え込みが厳しい朝、店舗の前を通った。
ブチ犬は暖かい毛布の上で横たわっていたが、その姿は見るからに弱々しく、ほとんど動くことはなかった。

そして、新年を迎えた。
ブチ犬の店の前を通りかかった時、ふと目をやると、そこにあるはずの寝床の毛布がなくなって、荒涼としたコンクリートの土間が剥き出しになっていた。
灯火の消えたような店先は、人の気配を感じることもなくなった。

それからは、もうブチ犬の姿を見ることはなかった。

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今年もまた冬が来た。
富士山も雪化粧して、冬山になった。
ブチ犬の存在を知ってから10年間…毎年繰り返す風景の変化。
まばらな人の通りも変わらず、店の前を走る自動車の流れも途絶えることはない。

ただ、そこにブチ犬だけがいなかった。

もうすぐ今年も終わる。
今朝も…寒々とした田舎街の通りを、白い息を吐きつつ、富士山を見上げながら歩いた。


-おしまい-



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