人と犬との変哲のない日常が、何かのきっかけで実はかけがえのない特別な瞬間の連続だったと気が付くことがある。
愛犬や家族との別れなどの生活の変化により、当たり前だった日々が特別な意味を持っていたことに気が付くのだ。
それは、愛犬と共に暮らすなら必然的に迎える出来事なのだろうが、そんな物語を集めた、いわばありふれた一冊の本を読んで考えた。
「犬が伝えたかったこと」 著者 三浦健太氏
(楽天ブックス)
この本は全20章から構成されているのだが、それぞれの物語の中心に犬がいて、様々な人間模様が描かれている。
愛犬の死や家族との別れはもちろん、些細な日常の変化や時には訳もなくハッと気が付く瞬間に、目の前の景色が大きく変わることが誰にでもあるだろう。
この本に取り上げられた物語は、全て実話をベースにしていて、そのどれもが誰にでも起こりうる平凡な物語である。
読み終えて、「犬が伝えたかったこと」とは何だろう…と考えた。
著者は、犬はそもそも昔を思い出したり、先々の未来を予め考えたりはしない…と、本書の中で述べている。
ひたすら「今」を一生懸命生きて、リーダー(自分の飼い主)に服従することを幸せとする…と。
そのような、言ってみれば本能に従うだけの動物である「犬」が、人に「伝えたいこと」などあるのだろうか?
結論として、犬が人間の「心」を理解してその「心」に影響を与えようとする「意思」はないと思う。
では、「犬が伝えたかったこと」とは、何か?
環境の変化や成長などで、ものの見方が変わった人間が、それまでと何も変わらない愛犬の仕草を見たり、かつての愛犬の姿を思い出すことで、「自分の中で気が付くこと」それ自体なのではなかろうか。
「犬が伝えること」とは、人間の解釈に過ぎない。
つまり、「犬が伝えたかったこと」とは、愛犬の瞳に写った自分の心なのだ。
アタチの心は、パパが決めてるのよ♪